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「きっとスタートとは恋の始まりという意味なんですわ。姫さまはお城の外へと出て、ドラゴンなどの「新しきもの」と出会いましたわ。そしてお次はその殿方との恋のスタートです。姫さまは運命の相手と出会ったんですのよ!」
「なに言ってんのよ……」
エリザベートはそれだけ言うのが精一杯だった。
「だいたい、もうすぐ結婚式なのよ」
「そうでしたわね。でも王冠をかけた恋も素敵ですわ」
王族が身分を捨てて、庶民とかけおちすることを「王冠をかけた恋」と緑の国ブルーテ王国ではいう。
シャルロッテはそんなロマンチックなものがとても好きなのである。
「姫さまがその殿方とかけおちしたいと考えているのでしたら、このシャルロッテ、いつでも協力いたしますわ」
シャルロッテの言葉にエリザベートは黙ってしまった。
マルセルとはいい友達になれるかもしれない。
ただ、マルセルと今すぐかけおちをするかと言われると、それは違う気がするのだ。
結婚なら、アレクサンドル王子としたほうが幸せになれるだろう。
アレクサンドル王子は、美しい外見と美しい心を持っていて、しかもお金持ちなのだ!
エリザベートが望むことは、なんでも手に入れられる。
野菜は食べたくないと言えば、料理長は毎日肉料理を出すし、もう勉強したくないと言えば、家庭教師もクビにしてくれる……なんて素晴らしいことなのだろう!
「さあさあ、姫さま。紅茶を飲んだり、詩集を読んだりしながら、恋についてお話しいたしましょう」
どことなくシャルロッテはうれしそうである。
「あの、シャルロッテ。せっかくなんだけど、もう一回、今日の夜に出かけたいの」
「今、なんておっしゃいましたの!」
シャルロッテは強い口調で言った。しかしエリザベートは聞くつもりはなかった。
「今夜、カッスルロッシュを使って首飾りが盗めるかどうか試そうと思うの」
「ひ、姫さま……なにをおっしゃってるんですか」
「ちょっと、シャルロッテ、落ち着いて」
「その殿方も殿方ですわ。ドラゴンを連れてお城までくるなんて……」
言いかけて、シャルロッテは首をかしげて少し考えている表情になった。
「分かりましたわ! そういう名目で、逢引きするというお話ですのね」
「ちょっと……シャルロッテ」
エリザベートは仰天したが、シャルロッテはまったく聞いていないようだった。
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