第1章

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「このシャルロッテ、逢引きの邪魔だなんてヤボなマネはいたしませんわ。どうぞお二人で存分に愛を語りあってくださいませ」 「だから、違うって……」 「でも、外泊はいけませんわよ? 少し会うだけにしてくださいませね」  シャルロッテの言葉に、エリザベートは力なくうなずいた。  乙女モードに入ってしまったシャルロッテになにを言っても無駄だと分かっていたからだ。 「あ、いたいた」  お城の外にいくと、マルセルがもう待っていた。マルセルの髪は月明かりの下では、少し暗い金髪に見える。  カッスルロッシュはあいかわらず大きかった。両の翼は夜目に見ても迫力がある。外は暗いが、月明かりに照らされたウロコが輝いていて美しい。  夜に外出したことのないエリザベートは、月の輝きと町の暗さが珍しかった。 「リジー……あのあと大変だったんだからな」  マルセルは少し疲れたように見えた。  エリザベートが帰ったすぐあとに、戻ってきた先輩のゲイルに根掘り葉掘りエリザベートのことを聞かれ、ごまかすのに苦労したらしい。  エリザベートは廊下ですれ違った二十歳くらいの、鋭い目つきの男を思い出した。あれがきっとゲイルだろう。あいさつをしたのに、すぐに目をそらされたのを覚えている。 「妹だってごまかしても、『なんで妹が自分の家に帰っていくんだよ?』とか言われてさ」  彼女だと思われ、好奇心から詮索されたそうだ。 しかし、お姫さまだということもできず、マルセルは本当に困ったらしい。 「カッスルロッシュを連れ出すのにも苦労したよ。庭先にいるから連れ出すのは簡単なんだけど、夕食の後にゲイルさんが部屋に遊びに来ないかって誘ってきてさ」 「ゲイルさんって人とそんなに仲がいいの?」 「いや、普段はあいさつぐらい。本当に今日はどうしたんだろう」  エリザベートをマルセルの彼女だと思って、あれこれ聞きだそうとしているのかもしれない。  ゲイルという男の人は、あまり目つきのよくない大柄な男という印象でしかない。人のことを詮索するのが好きだとは意外だ。 「彼女がドラゴンを見たがっているから、少しだけ借りるけれど、他の人には内緒にしてくれってお願いしといた」 「それでなんとか連れてきたのね。大変だったわね……私が夕食を食べていた頃ね」  エリザベートは、外交で行った海の都シュトローム国のことを思い出していた。
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