第1章

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 下に騎士の姿が見えた。ドラゴンに乗って飛んでいるエリザベートを見て慌てている。うまくまいたつもりだったが、見つかってしまった。 「どうしたの?」  エリザベートの焦りにマルセルが気付いたようだ。  エリザベートは笑顔で首を振った。 「なんでもない。あ、ねえ、どれぐらいで着くの?」  風にまぎれないように、大きな声でマルセルにたずねた。 「さっきの店から二区画だから、すぐに着くよ」  マルセルの答えが返ってきた。 「……歩いたほうが早いんじゃないの?」 「それは……まあ、ドラゴンを飛ばすのは配送屋の宣伝代わりだから、少しくらい派手なほうがいいんだよ」  マルセルは気まずそうに答えた。  下を見おろすと、道を行く人たちが足を止めて、こちらを見あげているのが見える。  町中をドラゴンを飛ばすとこんなに目立つのだなとエリザベートは実感した。  マルセルが二回笛を鳴らすと、ドラゴンは降下し始めた。ばさばさという翼の羽ばたきがすぐそばで聞こえる。  揺れがひどくなる。体が上へ下へとがくがくと揺れる。  ドラゴンの揺れに少し酔ってきた。地面が近づいてきて、エリザベートも思わず体に力が入った。  カッスルロッシュが地面近くで軽く翼を羽ばたかせて身体を浮かせると、地面に着いた。  体にどんと衝撃がくる。体中に入っていた力を抜くとエリザベートはほっと息をついた。  マルセルは先に降りると、エリザベートが降りるのを手伝ってくれた。 「よしよし、カッスルロッシュ、よく頑張ったな」  マルセルはそう言いながら、カッスルロッシュのノドをなでた。カッスルロッシュは目を薄めてうれしそうにしている。  エリザベートはその光景を微笑ましく見ていた。  配送屋の庭は思っていたよりもうんと広かった。  配送に使うのだろうか、見慣れない道具が隅に揃えて置いてある。カッスルロッシュのために庭を解放しているようだ。  目の端に庭の隅にある大きな穴が映った。 「あれはなに?」 「ねぐらだよ、カッスルロッシュの」  ねぐらには手押し車やシャベル、安価な宝石がたくさん入った宝石箱、それから金貨、王冠、トロフィー等のおもちゃもある。 「ドラゴンはみんなキラキラしたものが好きなんだ」  マルセルが教えてくれた。
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