第二章 厄島

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直弘の言葉を聞いた真里奈は俯いたまま涙を流し、「はい」と応えた。 リナは涙こそ流していないものの、「ほんっとゴメンね」と両手を顔の前で合わせていた。 薄い笑みを浮かべながらそんな二人を見つめるさゆりと、何処かまだ納得できていない様子の桑原。 「あの人も……許すの?」 桑原が小林を指さして問い掛ける。 直弘は眉間に皺を寄せながら俯き、「許すしかないだろうね。あの人が居ないと魚を釣る事は出来ないんだし」と応えた。 その瞬間、真里奈が虚ろな表情で口を開く。 「最悪、殺せばいいと思います。あの人を殺して竿を奪えば、皆で平等に魚を分ける事が出来ますから」 平然とした顔でそう告げる真里奈は、直弘の表情を変えた。 「真里奈さん……それ、本気で言ってる?」
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