第三章 厄鬼

61/61
2165人が本棚に入れています
本棚に追加
/708ページ
「俺達と一緒に帰る気になってくれたのか?」 「まさか。アタシはただ、その鬼の面をもらいに来ただけよ。その面、この先色々使えそうだしね」 彩海はそう言って直弘とさゆりの間をスタスタ歩き、厄鬼の頭の上に乗せられた面を取った。 「フフ、本当だったでしょう? アタシが厄鬼を殺したって話。残る九人の厄鬼もこんな感じなら楽勝ね」 「あなたは……あなたは何で平気なんですか? 何で平気で人を……殺せるんですか?」 さゆりが目に涙を溜めながら問い掛けると、彩海はクスクス笑いながら鬼の面を首から掛けて口を開く。 「だってアタシ、この島に来る前に人を殺しているしね」 その彩海の発言は、直弘達三人から言葉を奪う。 それに合わせ、忘れていた蠅の翅音が、再び耳元で響き始めた。
/708ページ

最初のコメントを投稿しよう!