第一章 厄年

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自由の効かない両腕に視線を落とすと、黒い手錠が掛けられていた。 その手錠はドラマやドキュメンタリー番組でよく見る玩具(おもちゃ)の手錠では無い。ステンレスのように見えるが、黒いペンキが塗られている。 手錠の中心には、【19204】という規則性の無い五桁の数字が赤く表示されていた。どうやら、一秒につき一つ数字を減らしている。【0】になった瞬間、爆発でもするのだろうか。   嫌な想像をしながら、視線を右に向ける。そこには、三十代前半と思われる女が眠っていた。 その女の手首にも同じ物が取り付けられており、中心にある数字も直弘の手錠にあるものと同じだ。 自由の利かない足にも視線を落とそうとするが、腹部をベルトできつく押さえつけられているせいで見ることが出来ない。背筋を正し、首を伸ばしてみても無駄だった。 ただ、靴を履いている事だけは分かる。
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