2166人が本棚に入れています
本棚に追加
/708ページ
石斧は想像していたよりもずっと軽かった。
心の中でそう呟いた進藤は細い腕で石斧を持ち、星が無数に散らばる夜空を見上げた。
時折足を止めては耳を澄まし、草木を掻きわける音や足音が聞こえてこないか確認する。
神経を耳に集中させるが、何も聞こえてこない。聞き飽きた同じ虫の声が聞こえてくるだけだ。
進藤は石斧に視線を落とし、直弘達と決別した日の事を思い出していた。
――「私達はもう、数時間前みたいに仲良く森を歩けない。正直、あなた達に近づくことすら怖い……。結局、私達は信頼関係なんて築きあげられる関係じゃなかった。それが今ハッキリした。こんなことなら、いくら厄鬼に森で追われたからと言って、あなた達の所へ逃げ帰って来るんじゃなかった……」
最初のコメントを投稿しよう!