最終章 本厄

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銃声が響くのに合わせ、重なっていた直弘とさゆりの唇が離れる。 島の中心から鳴り響いたその音は、地獄が終わっていないことを告げるには十分な威力を持っていた。 「ごめん、私……」  正気を取り戻したように目を丸くするさゆりは、自身の唇に親指を当て、直弘から視線を外した。 「謝らなくていいよ。でも……」 「わかってるよ。直弘がゆかりさんの事を今も思ってるのは分かってるから。なんていうのかな……直弘が生きててよかったって思ったら勝手に身体が動いちゃって……」  さゆりはそう言って、少し赤らめた頬を片手で仰ぎながら笑った。 「今の音、かなり近かったな。ミミコが言っていた田島ってヤツに違いない。とりあえず岩場に身を隠さないと……うっ」  直弘は立ち上がると同時に肩の傷を思い出し、眉間に皺を寄せながら傷口を押さえた。
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