最終章 本厄

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 ――――それから二日後、直弘は自宅であるアパートに戻っていた。  目が覚めた時には既にアパートの中で、二週間に起こった事全てが嘘のようにベッドの上で横になっていた。  それらが夢じゃないと教えるように全身に激痛が走り、顔を傾けると四つのキャリーケースが並んで存在している。  奥歯に舌をあててみる。発信機はミミコが言ったように綺麗に取り外されていた。  機内で全身麻酔を掛けられ、取り外されたのだろう。それをするためだけに機内で待機していたと思われる白衣の男性の顔がおぼろげながら思い出される。  その時、もう一つ無くてはならないモノを思い出す。 「パンプス……」  十年ぶりくらいに声を発したのではないかと思う程に掠れた声でそう呟いた直弘は、痛みに顔を歪めながら起き上がった。
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