夜ノ怪異譚

4/4
前へ
/4ページ
次へ
「壊れちゃった・・・?」  そう思い時計をよく見てみたが、壊れている様子はない。 カーテンを開けて窓の外を確認するが、辺りはまだ闇に包まれていた。 外を見渡そうと窓を開けようとするが、窓は開かなかった。 「あれ・・・おかしいな・・・」 (カギは閉まっていないのにどうして・・・)  急いで玄関に向かい、カギを外しドアノブに手をかける。 (よかった、ここは開くみたい・・・)  安心した女は扉を開ける。しかしそこには、路地で見かけた男が立っていた。 「あ・・・ああ・・・」  恐怖のあまりに体が固まってしまう。前に見かけたときと印象は違うが、姿は男そのものであった。混乱する女を見て、男は丁寧な言葉で話し始めた。 「今宵の生贄は、貴方様となりました」  そういうと男は女を部屋へと押し込み、扉にカギを閉める。 床に叩き付けられて全身に衝撃を受けた直後、首元に何か鋭いものが刺さる感覚があった。 (本当に吸血鬼なの・・・!) 女は必死にもがいて抵抗する。男は押さえつけることに必死な様子だった。 「まったく、少し大人しくしていてください」  そう言うと男は、女の右腕を握りしめた。 そしてその瞬間、女の腕が無残に破裂した。 「あああああああああああ」  その悲鳴は部屋中に響き渡る。 今まで味わったことない激痛に耐え切れず、女は気を失ってしまった。 「ふぅ・・・ありがとうございました。素敵なお姫様・・・」 「貴方のように、恐怖に染まる顔を見たのは久しぶりで、抑えが効かずに少々やりすぎてしまいました・・・」  女から流れ出してできた血だまりは、ここで起こった惨劇を物語っていた。 「それでは私はこの辺で。貴方のように手のかかる方は初めてでしたが、楽しかったですよ・・・」 女だったものに一礼をすると、男は扉を開けて、家の外へと出て行った。 男が出て行って少し経つと、部屋は跡形もなく消え去っていた。 その後、女は路地に、血まみれの状態で倒れているところを発見されたという。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加