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「壊れちゃった・・・?」
そう思い時計をよく見てみたが、壊れている様子はない。
カーテンを開けて窓の外を確認するが、辺りはまだ闇に包まれていた。
外を見渡そうと窓を開けようとするが、窓は開かなかった。
「あれ・・・おかしいな・・・」
(カギは閉まっていないのにどうして・・・)
急いで玄関に向かい、カギを外しドアノブに手をかける。
(よかった、ここは開くみたい・・・)
安心した女は扉を開ける。しかしそこには、路地で見かけた男が立っていた。
「あ・・・ああ・・・」
恐怖のあまりに体が固まってしまう。前に見かけたときと印象は違うが、姿は男そのものであった。混乱する女を見て、男は丁寧な言葉で話し始めた。
「今宵の生贄は、貴方様となりました」
そういうと男は女を部屋へと押し込み、扉にカギを閉める。
床に叩き付けられて全身に衝撃を受けた直後、首元に何か鋭いものが刺さる感覚があった。
(本当に吸血鬼なの・・・!)
女は必死にもがいて抵抗する。男は押さえつけることに必死な様子だった。
「まったく、少し大人しくしていてください」
そう言うと男は、女の右腕を握りしめた。
そしてその瞬間、女の腕が無残に破裂した。
「あああああああああああ」
その悲鳴は部屋中に響き渡る。
今まで味わったことない激痛に耐え切れず、女は気を失ってしまった。
「ふぅ・・・ありがとうございました。素敵なお姫様・・・」
「貴方のように、恐怖に染まる顔を見たのは久しぶりで、抑えが効かずに少々やりすぎてしまいました・・・」
女から流れ出してできた血だまりは、ここで起こった惨劇を物語っていた。
「それでは私はこの辺で。貴方のように手のかかる方は初めてでしたが、楽しかったですよ・・・」
女だったものに一礼をすると、男は扉を開けて、家の外へと出て行った。
男が出て行って少し経つと、部屋は跡形もなく消え去っていた。
その後、女は路地に、血まみれの状態で倒れているところを発見されたという。
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