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「はぁ・・・もうこんな時間か・・・」
パソコンの画面に表示されていた時間を見て、ため息をつく。
部屋の照明は消え、モニターの光だけが唯一、部屋の明かりとなっていた。
「なんでこんな時間まで仕事してるんだろ・・・私」
この会社に入って3か月目。最初はこんな時間まで残業することはなかったのだが、
日が経つにつれてだんだん残業の時間が増えていき、最終的に今のような状態になっていた。
といっても、ここまで遅くなることは今までなかった。今回が初めてだ。
(はぁぁ・・・辛い・・・。もう辞めちゃおうかな・・・。こんなところにいたら、体がいくつあっても足りないよ・・・)
そんなことを考えながら、残っている作業を進めていく。
真夜中の会社に響くキーボードの音は、彼女の心の虚しさをそのまま表している様だった。
1時間ほど経ったところで、彼女は文字を打つ手を止めた。
「やっと終わったぁぁぁ・・・」
伸びをすると、疲れ切った声が口から洩れる。時計を見ると時刻は深夜2時を回っていた。
「やっば・・・もうこんな時間なの・・・?ほとんど寝られないじゃん・・・」
「早く帰らないと・・・」
資料を片付けパソコンの電源を落とす。荷物をまとめると、スマホのライトを頼りに会社の外に出る。外は暗く、街灯と月の光だけが辺りを照らしていた。
(明日もこんな遅い時間まで仕事させられるのかな・・・嫌だなぁ・・・)
はぁ、と深くため息をつく。
(この時間帯って、なんだか不気味・・・何もなきゃいいけど・・・)
きょろきょろと辺りを見渡しながら女は歩き始めた。薄暗い道には点滅を繰り返す信号機の赤い光が反射している。人はおろか、車ですら1台も通っていなかった。
10分ほど歩くと、薄暗い路地に差し掛かった。女がいつも出勤に使っている道だ。
路地を歩いていると、突然「ガサッ」という物音が聞こえた。女は一瞬びくっとする。その音は、女の帰り道とは逆の道から聞こえてきたものであった。
街頭の明かりだけでは暗かったので、スマホのライトをつけて音のした方に向かって近づいていく。曲がり角の直前まで近づいたところで、一匹の黒猫がその道から飛び出してくるのが見た。
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