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1.殻=男(前篇)
アジア人向けの古いアパートの一室。
煤けた臙脂色の壁紙や絨毯のある部屋に一つのダブルベットがあった。
ベットの上では二人の男女が一つに絡み合っている。
女は20代前半、赤髪にしなやかな四肢、豊かで色白の柔らかな体を持っていた。
男は、筋肉質の体を持ち、頭部全体をラバーのマスクで覆っていた。
一見普通の人間に見えるが、左腕は甲殻類のような巨大なハサミになっておりその腕から左脇にかけての体の左半分も左腕と同じ堅い皮膚で覆われていた。
男は汗ばむ女の体に自分の体を重ねながら人間の皮膚のある右手を、女の長い髪や脇や太腿の上で滑らせる。女は首や腰を拗らせ男から体を逸らそうとする。
男が女の右胸を優しく撫で、それから牙を剥く獣のように強く握りしめる。
女は耐えられず呼吸を荒げ、小さく喘ぐ。男の腰に回した手が爪を立てる。
男は目を細め、女の喘ぎ声が早くなるのを感じながら、左胸も同じように触れる。
柔らかな女の白い肌に不釣り合いな黒い甲殻類のハサミのある左腕が、無造作に揺れ動く女の左胸を挟み込む。
女は快楽からかけ離れ、痛みに声を上げる。
「いっ…、あ…!!」
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