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前回と同じく、男物のシャツとハーフパンツを借りて着替えたものの、やはりサイズが大きい。肩幅はあまるし丈も長い。特にハーフパンツのウエストがゆるくて、気を抜けばずり落ちてしまいそうだ。
「……剣淵って、面倒見いいよね」
面倒見がいい、と佳乃に言われたからか、テーブルをはさんで向かいに座っていた剣淵が「あ?」と不機嫌な声をあげた。
「なんだかんだ言いながら服とかタオルとか貸してくれるでしょ?」
「お前のためじゃねーよ。んなびしょ濡れのやつが家に入ったらめんどくせーからやっただけだ」
「でも、ありがとう」
佳乃が告げると、剣淵はむすっとしたままそっぽを向いて「おう」と短く答えた。表情は固いがそこまで不機嫌ではないのだろう。感謝されて照れているだけなのかもしれない。
そのまま剣淵も黙り込んでしまうものだから、気まずい空気が流れる。それを払拭すべく、佳乃は声をかけた。
「剣淵って一人暮らしなんだよね?」
「おう」
「……お湯、好きなの?」
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