21話 その時からタヌキは呪われた

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 あけぼの町は隣町ながら、古くからの町並みが残っている。佳乃たちが住んでいる地域は再開発されたため綺麗なマンションやビルが多いが、少し移動してあけぼの町に入れば畑や地主の平屋が並ぶ田舎の景色に変わる。最近ではあけぼの駅周辺の再開発も進んでいるようだが、駅から離れた地域、特に近隣住民にあけぼの山と呼ばれているあたりはまだまだ古びた空気を残していた。  そのあけぼの山の近くに、おばあちゃんの家があった。平屋には佳乃だけでなく、おばあちゃんの娘やその子供たちも住んでいた。いま思いだせばあれは住んでいたのではなく、夏休みを利用して帰省してきたのだろう。 「そのおばあちゃんの家でね――伊達くんと出会ったの」 「……伊達と?」  佳乃は頷く。  佳乃がおばあちゃんの家に預けられ、そこで出会ったのがおばあちゃんの孫である伊達享だった。  母や父と離れて預けられた佳乃は、ときおり両親を思い出しては寂しさに泣いていたのだが、この時に声をかけたのが伊達である。佳乃の涙を止めるべく話しかけ、遊びに誘い、悲し気持ちになればいつも伊達に助けられていた。まだ小学一年生である二人は男女の性差を知らず、意気投合するのに時間はかからなかった。
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