3話 呪われタヌキ、叫ぶ

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 一人になってしまった空き教室。浮島は汗でべたついた髪をかきあげた後、スマートフォンを取りだした。そして先ほど撮影した動画を確認する。  映っているのは放課後の空き教室に、二人の女子生徒。制服のリボンから二年生だろう。一人は机に突っ伏し、もう一人がそれをなぐさめているのだが、その動画が進んだところで叫び声が聞こえた。  スマートフォンから流れる叫びを聞いた浮島は、愉快だとばかりに声をあげて笑った。 「サイコー。こんなおもちゃが近くにいたなんて、もっと早く見つければよかった」  その動画は盗撮。女子生徒たちのただならぬ空気を感じた浮島は、スマートフォンで彼女たちの会話を録画していたのだ。  女子生徒のうち一人は二年女子でも美女で有名な北郷菜乃花だったため、弱みや情報を掴めば面白いことになるかもしれないと思ったのだ。それが、どうだ。蓋を開けてみれば、北郷菜乃花よりも面白い存在がいるではないか。  浮島は動画を巻き戻す。そしてもう一度、女子生徒の叫びを聞いた。 『嘘をつくたびにキスされる呪いなんて、勘弁してよ!』  女子生徒のことは知っている。北郷菜乃花と一緒に行動している、二年のタヌキ系女子だ。彼女でどのように楽しもうかと想像し、浮島の表情が恍惚に酔う。そして動画に映る新しいおもちゃを指でなぞって怪しげに囁いた。 「オレを楽しませてよ、三笠佳乃ちゃん」
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