4話 タヌキに拒否権なし

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***  二年の三笠佳乃が、浮島先輩に呼び出された。  そのやりとりを目撃してしまった生徒たちは、二人の姿が廊下から消えてもざわざわと騒いでいた。  浮島紫音は有名な生徒である。艶のあるルックスに夜遊び、女好きと悪い噂が多く、女子生徒二人と同時に付き合っただの、担任の女教師とデートをしていただのと言われているが真相は誰にもわからない。  ただその派手なルックスが目を引いた。校則なんてどこへ消えたのか、先生たちもお手上げの問題児である。  そんな浮島が平凡なタヌキ顔の女子生徒を呼び出し、二人きりで話がしたいとどこかへ行ってしまったのだ。このニュースは生徒たちを驚かせた。 「紫音先輩の隣にいたのって、A組の三笠さん……だよね」 「うっそー。なんで三笠さんが? 北郷さんならわかるけど、三笠さんはちょっとショックかも」 「昨日、B組の子がフラれたらしいけど、三笠さんが新しいカノジョなのかな」  ひそひそと話すのは女子生徒たちだけではない。  これから部活に行こうとしていた男子生徒たちも、二人のやりとりを見ていたのだ。 「すげーな、浮島先輩。彼女をとっかえひっかえじゃん、モテる男はいいよなー」 「でもタヌキの三笠だろ? すぐに捨てられるって」  そうだな、と男子たちが笑う。  だが、佳乃と浮島が降りていった階段を睨みつける男がいた。彼だけは不愉快そうに眉をひそめている。 「剣淵、行こうぜ。今日の練習で気に入ったら、サッカー部に入ってくれよ」  ぽん、と肩を叩かれてその男は我に返る。それでも、もやもやとしたものが残っていた。  困ったようにため息を吐いて、かばんを肩に引っ掛けなおす。 「……チッ、めんどくせぇな」 「そんなこと言わずに! 頼むよー!」  そして波乱の放課後三日目が始まった。
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