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このノートが佳乃と伊達の距離を縮めるきっかけになる、いやきっかけにしてみせる。決意を胸にする佳乃だったが、水をさすように菜乃花が口を開いた。
「何回も言うけど、嘘には気をつけてね。調子にのって嘘をついてしまったら呪いが発動してしまうから」
「わ、わかってるよ!」
「伊達くんと仲良くなりたいからって、呪いを悪用してはダメよ。そんなことしたら罰があたっちゃうわ」
じろりと睨みつけられ、佳乃は乾いた笑いを返すしかない。
付き合いの長い菜乃花の勘は大当たりだった。
佳乃が考えていた、伊達と仲良くなるための方法とは呪いを使うことなのである。そのため下手に喋ってしまえば、ごまかすための嘘となり呪いが発動してしまう。冷や汗を浮かべながら言葉を飲み込んだ。
この呪いによって佳乃は『正直者のタヌキ』になってしまったのだ。経験上、困った時は口を閉ざすのが一番。それほど怯える呪いとは――菜乃花が続けた。
「佳乃ちゃん、嘘をついたらキスされちゃうんだから」
わかっているよ、とアピールすべく大きく頷いた佳乃だったが、その瞳はメラメラとやる気に満ちていて忠告は届いていない。
いままで疎んじてきた最悪な呪い。それは今日この時に使うべきものだったのだ。罰なんて知ったことか。片思いに蝕まれ続けたタヌキは心の中で意地悪く笑った。
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