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4話 タヌキに拒否権なし
呪いが原因だとはわかっているのだが、剣淵がこなければ伊達とキスをすることができたのだ。そして、佳乃のことが嫌いだと言う。じゃあなんでキスをしたのかと泣きたくなってくる。剣淵への恨みがふつふつと募っていく。
剣淵奏斗は最低な男だ。ぶっきらぼうで何を考えているのかわからず、いつも不機嫌で怒っている。あと乱暴なところがあって、かばんを置いたり教科書を出したりする、わずかな動作でも大げさな音を立てる。
乱暴で、最低で、最悪な男――しかし、そう思っているのは佳乃だけだった。
「ねえ、A組の転校生、見た?」
「見た見た。かっこいいよね」
剣淵が転校してきた翌日。A組の転校生がなかなかのイケメンだとうわさが広まり、休み時間になれば他クラス生徒による剣淵観光ツアーが開催されていた。同じクラスの女子たちも剣淵の席に集まり話しかけているため、隣の席である佳乃は落ち着かない休み時間を過ごしていた。
「剣淵くん、クールでワイルド、って感じがする!」
「あんまり女子と喋ってないよね、苦手なのかな」
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