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5話 タヌキの妄想力は豊かである
呪われタヌキに拒否権はない。脅された佳乃は黙って浮島についていく。
話ができるところとして浮島が選んだのは空き教室。昨日佳乃と菜乃花が使った場所だった。
教室に入ったところで浮島が扉を閉め、教室中央の机に腰かけた。
対する佳乃はというと、浮島への警戒心をむき出しにして距離を開け、壁際で立ち止まった。いつでも逃げ出せるようかばんは肩にかけたままだ。
「さて、と。可愛い後輩ちゃんと二人きりなんて楽しいね」
「……早く本題に入ってください」
「やだー、佳乃ちゃんったらコワーイ。可愛い顔が台無し」
ケタケタと明るく笑う浮島だがそれは表向きだけ。佳乃が取る行動や仕草、些細なものまで見抜いてやるとばかりに細い瞳の奥が鋭い光を湛えている。
二人を包み込む緊張感。それを揺らしたのは、質問者である浮島が投げた言葉のボール。球種はもちろんストレートで。
「ねえ、嘘をついたらキスされちゃう呪いって、ホント?」
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