僕の幼馴染みが玄関から入ってこない

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 そんなことを考えていると彼女はいきなりベットから起き上がり、こちらに迫ってきた。近い、富士の動物が近すぎる動物園より近い。 「ただ来たわけではないわ」 「質問はスルーですか……で?なんのようで来たんだい?」  彼女は色々な理由で家に来るが、今回の用件はなんとなく予想がついている。ちなみに三割くらいはまともな理由じゃない。  今回は恐らくだが……。 「今日あなたの家、おばさまもおじさまもいないでしょう?」 「そりゃ仕事で泊まりだからね」  家は父親は単身赴任、母親は建設業でよく現場に泊まることがある。必然的に僕は家で一人のことが多くなり、こんな風に彼女と過ごすことになる。嬉しいと言えば嬉しい。 「となるとあなた、食事が出来ず飢えで苦しむことになるでしょう?」  いや……料理くらい出来るんですけど……どんだけダメ人間だと思われてるんだ。少なくとも中学前半では僕の方が料理出来てたんですけど……。 「だからあなたのために私夕食をつくったのよ」  不満げな僕を無視して話を進めてくる。どうやら最初からこっちの主張は聞く気がないようだ。  しかし、予想通りだ。彼女の美味しい料理を食べられるのはありがたい。自分でつくって自分一人で食べるのは中々虚しいのだ。この家は無駄に広いからボッチ感がより増してしまう。 「助かるよ、これから買い物にでも行こうかなって」 「でも家に夕食を忘れてきてしまったのよ」  なにしに来たんだこいつ……。人の家まで来て鞄漁って罵倒してるだけじゃねーか……。  彼女は僕のジト目をスルーしながら、部屋のドアを開けて廊下に出ていく。 「ハハ、冗談だろ?忘れものなんて真面目な君らしくないこと……」 「確かに私はめったにものを忘れないわ、でも今日は忘れたい気分だったの」  どんな気分だよ。なんだよ過去にとらわれたくない感じの気分だったのか?  まあなんでもいいや。 「じゃあ持ってきてくれないか?」 「夜道を私のようなか弱い女子に歩かせるなんてやっぱりデリカシーがないのね、野比くん」 「誰が射的眼鏡だ、僕は野火だ」  だが言うことはわか……。 「いや僕の家から君の家まで百メートルもないんだけど?」 「この近く不審者が出るらしいのよ」  最近不審者の話なんて聞いたことないが、気をつける必要かあるのかも知れないな。
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