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「男子高校生ぐらいで凡人らしい見た目と美人で優しい完璧な幼馴染みをもつ不審者らしいわ」
「僕じゃねーか」
どう考えても僕じゃないか、いや僕は不審者じゃねーよ。そもそもこの地区の住民だからこの辺り歩いてても怪しくねーよ。
「私……怖いわ変野くん……」
やめろ潤んだ眼でこっちを見るんじゃない。その顔はもっと別の時に使え。そして変野ってなんだ。さっきから僕の名前で遊ぶな。
「変態扱いや不審者扱いはやめてくれ」
「あら? 事実じゃないかしら?」
根も葉もない、完全な言いがかりだ。僕は同世代のなかでは比較的紳士的かつクールな男で通ってるんだぞ。
「いくらなんでも『搾乳メイド長~夜の大運動会~』のタイトルには引いたわ……」
根も葉もどころが実まで結んでいた。そしてそのトップシークレットを何故知っている。
「それは僕のじゃない」
「あら? おじさまのかしら」
「もう一人の僕のだ」
「あなたじゃない」
誤魔化せないか……闇のゲームの罰で置かれてるとでも言うべき……。
「ところで夕食はどうするんだい?」
「取りに行くわ」
玄関へ向かう彼女を後ろから追う。
よし誤魔化せた。チョロいもんだなやっぱり。そう言うところは可愛いげがあるんだが……。
「ところで」
「なんだい?」
「『アダルトチューブ』ってなにかしら?」
可愛いげなんて微塵もなかった。
「さっさと飯とりに行こうか」
彼女を引きずって外へ出る。向かう先は勿論彼女の家だ。
しかしふと考えて見るとなぜ家まで来たのだろうか。彼女はスマホも使えない古代人じゃないし、連絡先は交換している。
「わざわざ家まで来ないで電話で呼んでくれても良かったんだけど」
「あなたに会いたかったのよ」
真顔で言わないでほしい……。少し顔が赤くなるのがわかる。本人は無自覚なんだろうなー。
多分彼女は澄まし顔なのだろう。
ちょうどライトの光が弱く、顔は見られていないようだ。
「……」
「…………」
普段なら多少の雑音がある夜道は、全く物音がせず二人とも話さなくなったので静寂に包まれた。
……気まずい、こんな感覚は久しぶりだ。彼女と僕は気を使わない間がらだったのだが……。
「……もちろん、嘘よ」
暗い道を笑って振り替える彼女。
「僕をもてあそんで楽しいかい?」
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