楽しいオシゴト

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5階にはたくさんの棺桶が並んでいる。色やデザインも様々だ。 運び屋はその中から純白の棺桶を選んだ。蓋を開ければ寝心地が良さそうな、光沢のある敷布団が敷かれている。 棺桶を専用のワゴンに乗せ、美香の近くまで転がす。 運び屋は棺桶の中に美香の遺体を寝かせると、冷凍庫から大量のドライアイスを持ってきて、白やピンクなどの造花と共に棺桶に敷き詰めた。 「綺麗にできたよ。君は気に入ってくれたかな?王子様も気に入るといいね」 運び屋は、美香の遺体に優しく声をかけると、棺桶の蓋をそっと閉めた。 運び屋は棺桶を1階に運ぶ。そこにはジョセフもいなければ馬車もない。 彼らは夜にしか姿を見せないのだ。 運び屋は「効率が悪い」とぶつくさ言いながら2階に戻った。 「自分で取りに来てくれればいいのに……」 文句を言いながらも、運び屋は内臓や血液を、大きな保冷カバンに入れて外へ出る。 「はぁ、黒い病棟に行くのも久々だ……」 運び屋は通勤ラッシュの人混みに紛れた。 だがそれも一時的なもので、横断歩道を渡れば、あとはビルの間を抜けて小さな自然に入るだけだ。 “小さな自然”と言えば聞こえはいいが、そこは日が出ているというのに薄暗い。 いつあの世の住人と遭遇してもおかしくなさそうだ。 小さな自然の中央へ行くと、開けた場所が出現した。 そこには文字通り“黒い病棟”がひっそりと建っている。 病棟に入ると、受付に疲れ顔のナースがいる。 若さも美貌も、滲み出た疲労で台無しだ。 ナースは運び屋の存在に気づくと、げんなりした顔をした。 「朝イチ取れたてだって言っといて。ま、鮮度はイマイチだけどね」 運び屋がそう言って保冷カバンを渡すと、彼女はガックリと肩を落とした。 ナースがしっかりと保冷カバンを受け取ったのを確認すると、運び屋は黒い病棟を離れた。
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