楽しいオシゴト

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ビルに帰ると6階へ行った。 そこには平穏が広がっている。運び屋は睡眠以外はこの階で過ごしている。 冷蔵庫からスコーンを取り出してレンジで温め、その間にお気に入りのルイボスティーを淹れる。 スコーンが温まるとストロベリージャムをたっぷりと塗りたくって、口いっぱいに頬張った。 食事を終えると運び屋は4階へ戻り、目覚まし時計を夕方の4時にセットして眠った。 コンコンコンコン、バンッバンッ ゴンゴンゴンゴンッ!バンッ!バンッ! 運び屋は目覚ましでなく、ドアを叩く音で目が覚めた。 時計を見れば3時50分だ。 「せっかちな王子様だ……」 運び屋は舌打ちをして目覚ましのアラームを解除すると、乱雑にドアを開けた。 「何度もノックしてたんだが」 不機嫌そうな透が立っていた。 「夕方まであと10分もあったんだけど。ま、いいや。こっち」 運び屋は透を部屋に入れると、エレベーターを隠しているドアを開けた。 「なんだ、エレベーターあったのか」 透は目を丸くする。 「普通の客は使えないけどね」 運び屋は気だるげに言うと、ボタンを押してエレベーターのドアを開けた。 「俺は普通の客じゃないって事か?」 透はエレベーターに乗りながら聞く。 「依頼に成功したからね。ところで報酬は?」 運び屋はエレベーターの操作をしながら言う。 「これでいいのか?」 透は分厚い茶封筒を運び屋に差し出す。 運び屋は受け取るとすぐに中身を確認した。茶封筒の中には100万円が入っている。 「確かに」 運び屋は短く言って懐に茶封筒をしまった。 1階に着いてドアを開けると、真っ白な棺桶が目につく。 「ここに、美香が……」 透は固唾を呑んでゆっくり棺桶に近づく。
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