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ビルに戻ると、運び屋は美香の遺体を2階へ運んだ。
そこは手術室と酷似した部屋だ。
運び屋は美香を台にそっと寝かせた。
「時間になったらまた来るよ」
運び屋は美香に優しく話しかけると、4階に戻り、目覚ましを6時にセットして眠った。
早朝6時になると、目覚まし時計はけたたましい音を立てた。
それと同時に、運び屋の身体が元に戻っていく。
運び屋は目覚ましの音に不機嫌顔になりながら、手を見つめて戻るのを待つ。
手が戻ると、運び屋は勢いよく目覚ましのボタンを押して止め、完全に戻るのを待った。
身体が完全に元に戻ると、運び屋はエレベーターで2階に降りた。
「おはよう、お姫様。今から君を生まれ変わらせてあげるからね」
運び屋はメスを片手に話しかけると、美香服を破いた。
消毒液のスプレーを全身にかけて殺菌する。
「婚約者がいるレディ相手に、気は進まないけど……」
運び屋はそう呟きながらクリームを手に取り、顔からつま先まで満遍なく塗った。
これは皮膚の乾燥を防ぐための重要な作業だ。
運び屋はメスを手にすると、右鎖骨上部と左の太ももにある動脈と静脈を切開する。
切開した所にそれぞれ管を入れ、鎖骨の方からエンバーミング溶液を流し込んだ。太ももの管の出口には、大きな瓶を置いた。
それから運び屋は、美香の遺体を丹念にマッサージする。身体の端から心臓へ向け、ひと通りマッサージをすると、今度は身体を拭きながら再びマッサージをする。
エンバーミング溶液が全身に行き渡ったことを確認すると、嬉しそうにメスを再び手にした。
「さて、ナカも綺麗にしようね」
運び屋は静かな狂気を顔に滲ませながらも、丁寧に切開する。
内臓を切り離してそれぞれ専用のケースに入れては、模型内臓を入れるという作業を黙々と行う。
心で狂気をギラつかせながら。
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