楽しいオシゴト

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全ての内臓を取り替えると、血液で満杯になった瓶に蓋をした。 「ふぅ、これからだ……」 運び屋は小さく息を吐くと、縫合を始める。 遺体にはもちろん再生力なんてない。だからこそ細かく丁寧に縫合をしなければならない。 これにはかなりの集中力がいる。 時間をかけて縫合を終えると、運び屋は大きく伸びをした。 あちこちからバキボキ音がする。 「この仕事は好きだけど、縫合だけはなぁ……」 そう言いながら身体のあちこちを伸ばすと、今度は管から再びエンバーミング溶液を流し込んだ。 このエンバーミング溶液は、1度目のものより濃度が濃い。 エンバーミング溶液を流し込むと管を抜き取り、そこも縫合する。 運び屋は脱脂綿にエンバーミング溶液を染み込ませ、縫合部分を綺麗にした。 「もう少しで終わるからね」 運び屋は美香に話しかけると、殺菌洗剤で美香の身体を綺麗にしてやる。もちろん頭髪もだ。 その際不備がないか入念にチェックもする。 洗浄が終わると、タオルで優しく身体を拭いてやり、髪はドライヤーで乾かしてやる。 遺体の手入れが終わると、スリーサイズを測った。 「これなら丁度いいのがあったはず」 運び屋は部屋から出ると、エレベーターに乗って3階へ行った。 部屋に入ると、そこには様々な服が並んでいる。 冠婚葬祭で着るような礼服や普段着、ひと通りの職業の制服まである。 しかもどれもサイズを数種類用意してあるのだから驚きだ。 運び屋はウエディングドレスを1着手に取りサイズを確認すると、ウエディングドレスを持って2階へ戻った。 運び屋は慎重に、ウエディングドレスを美香に着させる。 「あぁ、よく似合ってる……。君の王子様も喜んでくれるだろうね」 運び屋は穏やかに美香に声をかけると、彼女を車椅子に乗せて5階へ行った。
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