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迷ったが、愛莉はそのまま、押入れのふすまをしめて、トイレのほうへ行った。二階にまであがる時間はないと思ったからだ。
カギを持っていってもよかったのだが、そうすると、万一、祖母が離れに行こうと思ったときに、カギがなくなっていることに気づいてしまう。
ガラガラと玄関の戸があいた。
愛莉はトイレから出て、玄関にまわった。
「おかえり。おばあちゃん。朝早くから、どうしたの?」
「あれ? 起きてたの? 愛ちゃん。お守りの材料、とってきたよ。ちょうどいいのがあったから、作っておくね」
「あっ、そうか。ありがとう」
「朝ご飯は?」
「もう一回、寝るからいいよ」
「そう」
愛莉は平静をよそおって、二階へあがった。
あとちょっとだったのだが、しかたない。祖母に怪しまれるよりは、またの機会をうかがったほうがいい。
二階にあがると七時になっていた。
雅人はもう起きただろうか?
昨日も、はぐれてしまった。
気になって電話をかけたが、つながらなかった。
まだ寝ているのかもしれないと思い、すぐに切った。
それで思いだしたが、雅人の知りあいの刑事から、名刺を受けとっていたのだった。あとで電話をくださいと言われていた。
昨日、あの林にいたというのとは、夜通し捜査を続けていたかもしれない。電話をかけると迷惑かなと愛莉は考えた。が、いちおう、かけてみることにする。
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