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外に出たところで、愛莉は雅人に電話をかけてみた。
つながらなかったが、留守電に切りかわった。さっきは留守電になる前に切ってしまっていたわけだ。
「雅人くん。わたし、愛莉。今から、雅人くんの家に行くね。近くまでついたら、また連絡する」
それだけ言って、電話を切る。
祖母の自転車を借りて、神社の方角へむかった。
雅人の祖父母の家が、そのあたりだったのは、たしかだ。
神社の近くの林は、立ち入り禁止の黄色いテープが張られていた。まだ捜査中なのか、警察官の姿も見える。周囲には放送局の中継らしい人たちが何組も、うろついている。
まあ、そうだろう。
こんな片田舎の町で、十五体も死体が見つかるなんて異常だ。マスコミがとびつかないわけがない。
このあたりかなと思いながら、住宅街をうろうろしていると、うしろから、ぽんと肩をたたかれた。
てっきり、雅人が迎えに出てきてくれたんだと思った。
「雅人!」
勢いこんでふりかえると、そこに立っていたのは、雅人ではなかった。杏だ。
「……あっ、ごめん。まちがえた」
「いいよぉ。彼氏と待ちあわせだったんだ」
「うん。まあ」
「わたしも今からデートなんだ。昨日の、すうくんと」
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