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(よかった。きっと、ここだ)
愛莉はなんの疑いもなく、呼び鈴をならした。
しばらくして、なかから七十くらいの女が出てくる。雅人は一人暮らしをしていたような気がしたが、これも勘違いだろうか?
「どなたですか?」と、たずねてくるので、愛莉は正直に告げた。
「雅人くんの友人です。雅人くんはいますか?」
「ああ、そうなの。雅人ね。ちょっと待ってね」
古い家だから、インターフォンがとりつけてないのだろう。わざわざ、前庭を往復して、なかへ呼びにいく。
そっか。あれが雅人くんのおばあちゃんか。しまった! もっと、しっかり挨拶しとくんだった。印象悪くなってない?
愛莉がそんなことを考えてあせっていると、ふたたび玄関ドアがひらいて、今度は男が出てくる。
愛莉と同年代の若い男。でも、それは……。
愛莉は、がくぜんとした。
自分の目がどうかしたのか?
たしかに、けっこうイケメンだ。
たいていの女の子はキャアキャア言うかもしれない。
背が高く、健康的に日焼けして、スポーツマンタイプ。
でも、それは、雅人じゃない。
雅人とは似ても似つかない。
男が近づいてくるのを見て、愛莉は思わず、逃げだしていた。
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