五章

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五章

あわてて自転車に乗って走っていると、林に近い通りで雅人を見つけた。 雅人が愛莉を認めて、かけてくる。 運動制限されてるのに大丈夫なのだろうか? 「雅人」 思わず、愛莉は雅人に抱きついた。 雅人はおどろきながらも、両手で愛莉を抱きかえしてくる。 「よかった。もう二度と会えないのかと思った」 涙がにじんでくる。 「なんで?」 「だって、電話もつながらないし」 「ごめん。電源、切ってた」 「心配したよ。昨日も急にいなくなるし。それに……」 さっきのあれは、なんだったのだろうか? 雅人の家のはずなのに、呼ばれて出てきた男は別人だった……。 そのことを打ち明けると、雅人は笑った。 「それ、たぶん、同姓同名だよ。近所に同じ名字のうちがあるんだ」 「えっ? そうなの?」 「うん。下の名前は漢字、違うんだけどね」 「なぁんだ!」 安心して、また涙が出てきた。 雅人は愛莉の涙を親指の腹で、すっとぬぐってくれる。 「ごめんね。心配かけた」 「わたしが早とちりだから、いけないんだよ」 人通りがなければキスするのにと思ったが、さすがに、ちょっと、てれくさい。 愛莉が落ちついたころ、雅人が言った。 「さあ、今日はどこに行く?」     
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