65人が本棚に入れています
本棚に追加
五章
あわてて自転車に乗って走っていると、林に近い通りで雅人を見つけた。
雅人が愛莉を認めて、かけてくる。
運動制限されてるのに大丈夫なのだろうか?
「雅人」
思わず、愛莉は雅人に抱きついた。
雅人はおどろきながらも、両手で愛莉を抱きかえしてくる。
「よかった。もう二度と会えないのかと思った」
涙がにじんでくる。
「なんで?」
「だって、電話もつながらないし」
「ごめん。電源、切ってた」
「心配したよ。昨日も急にいなくなるし。それに……」
さっきのあれは、なんだったのだろうか?
雅人の家のはずなのに、呼ばれて出てきた男は別人だった……。
そのことを打ち明けると、雅人は笑った。
「それ、たぶん、同姓同名だよ。近所に同じ名字のうちがあるんだ」
「えっ? そうなの?」
「うん。下の名前は漢字、違うんだけどね」
「なぁんだ!」
安心して、また涙が出てきた。
雅人は愛莉の涙を親指の腹で、すっとぬぐってくれる。
「ごめんね。心配かけた」
「わたしが早とちりだから、いけないんだよ」
人通りがなければキスするのにと思ったが、さすがに、ちょっと、てれくさい。
愛莉が落ちついたころ、雅人が言った。
「さあ、今日はどこに行く?」
最初のコメントを投稿しよう!