五章

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愛莉は林のほうを見た。おどろいたことに、そこにいる霊たちが、愛莉に気づいていない。昨日までは、何かを訴えるように、じっと愛莉を凝視していたのに。 (おばあちゃんのくれたお守りのおかげだ) だから、ほんとなら、今日こそ林のなかへ入ってみたい。でも、そこは警察によって立ち入り禁止になっている。マスコミもいるし、とても、こっそり入っていける状態ではない。 「あっ、そうだ! 神社は? 神社になら、入ってもいいのかな?」 祖母は神社から材料を持って帰ってきた。ということは、神社には入ることができるはずだ。 「そうだね。鳥居の周辺にはテープが張ってないね」と、雅人がうなずく。 「じゃあ、空蝉神社に行ってみたい」 愛莉は自転車のうしろに雅人を乗せて、神社の鳥居の見えるところまで移動した。鳥居のなかは雑木林の一部だが、数メートル歩いたところに石段がある。神社は、そこからのぼっていったさきにある。 鳥居のところに、警察官が立っていた。 「君、ここからさきは立ち入り禁止だよ」 「神社に行きたいんですけど」 「ああ。神社ね。そっちは行くんじゃないよ? いいね?」 念入りに注意されて、愛莉たちは鳥居をくぐる。 行こうと思えば、死体が発見された現場に、こちらがわからでも行ける。が、さっきの警察官が見ているので、しかたなく、最初の予定どおり、神社の石段をのぼった。 静謐(せいひつ)な空気。 参拝客はほかに誰もいない。 (この神社って、神隠しがあるんだっけ)     
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