六章

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六章

「お母さん。愛莉と二人で話させてくれませんか」と、祖父は言った。自分の妻のことを、お母さんと。 祖母がうなずいて出ていくと、祖父はため息をついた。 「おばあちゃんは、しかたないんだ。もとが、よその土地の人間だからな。おばあちゃんには、じいちゃんが俊一に見えているんだ」 さっきからの祖母のようすを見れば、たしかに、そうなのだろう。 「なんで? わたしには、おじいちゃんの若いころに見えるよ? おばあちゃんには、なんでお父さんに見えるの?」 「おばあちゃんは嫁に来た人だから、空蝉神社の生まれつきの氏子じゃない」 愛莉は息を飲んだ。 ここで空蝉神社の名前を聞くとは思っていなかった。 「やっぱり……あの神社が……空蝉姫のことが関係してるのね?」 「誰かから聞いたのかね? お父さんから?」 「自分で調べたの。お父さんがおじいちゃんを殺すはずないと思って。それを証明するために。でも、調べれば調べるほど、よくわからなくなって……」 祖父は物置のかたすみに置かれた古いソファーに腰かけた。愛莉もむかいのテーブルに乗ってすわる。 「愛莉は空蝉姫の伝説を知っとるかね?」     
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