六章

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目というよりは記憶の錯覚のようだ。 「でも、わたしには、おじいちゃんの姿に見えるけど。わたしは、ここの土地で生まれたわけじゃないし……」 「昔から、たまに、そういう人がいたらしい。子どもなどな。空蝉姫の霊力が効きにくいようだ」 愛莉が生まれつきに持つ霊能力のせいなのかもしれない。 それにしても、さっき、祖父の話を聞きながら、とても気になったことがある。 「ねえ、おじいちゃん。蝉じいさんって、誰なの?」 「ああ。じいちゃんと同じように身を移した人が、以前は何人もいたもんだよ。蝉じいさんは、昔、このへんじゃ、ちょっと知られた人でな。しばらく姿が見えんと思っとったら、別の人間になっていた」 「さっき、滝川って言ったよね? それ、滝川圭介って人?」 「なんだ。知ってたのか。そうだよ。あの人も移し身をした人だ」 それで、祖父の事件が未解決になるなんて言ったのだ。祖父が父に移し身したことを察していたのだろう。だとしたら、滝川圭介は信用ができる。 「ねえ、おじいちゃん。それで、おじいちゃんとお父さんのことはわかったよ。でも、このごろ、あの林で大勢の死体が見つかったり、行方不明の人がいるよね? あれは、なんなの?」 「じいちゃんにも、わからん」     
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