六章

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* その夜は、祖父母と愛莉の三人で団らんをとった。 家のなかで愛莉から隠れている必要がなくなったからだ。 父として接しなければならないのは、なかなか、なれなかったが、祖父の存在は嬉しかった。 「おじ……お父さん。前に図書館まで、わたしのこと、つけてきたでしょ?」 「すまん。すまん。愛莉のことが心配で」 「心配してくれるのは嬉しいけど、自分が捕まらないでね」 「そのことも、なんとかせんとなぁ」 じっさいに祖父を殺したのは父なので、警察にうまく説明することができない。 父の疑いを晴らさなければ、祖父は父として生活していくことができないし、なんとかならないものだろうか……。 滝川さんに相談したほうがいいかもしれないと考えながら、愛莉はテレビを見ていた。ニュースでは、あいかわらず、この町で発見された死体のことや、原因不明の突然死のことが話題になっている。 「また突然死です。本日未明。都内の十九さいの学生が新種の病気と思われる症状で死亡しました。これで犠牲者は十人めです」 この前、テレビで見たときは被害者は六人だったはずだ。いつのまにか、四人も亡くなっていたのか。     
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