六章

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黒? いや、赤い。黒ずんだ赤い……血。 愛莉はさらに上の段を見あげた。 そこに女の足もとが見えた。 異様に白い肌には、血の気が感じられない。 足もとから上へ、上へ、視線をあげていく。 はやりの服には見おぼえがある。つい最近、どこかで見た。 直立不動の女の足。スカートをはいた腰。ゆるいシルエットのブラウス。深くひらいた胸もと。細い首。 その首すじにあるホクロを見て、愛莉はドキッとした。 このホクロ、もしかして……。 あわてて首の上をたしかめる。 愛莉は悲鳴をあげた。だが、それは怖かったからじゃない。 (杏ちゃん!) 今朝も会ったばかりの杏の霊が、口から大量の血を吐いて、そこに立っていた。
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