六章

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* 杏が死んだ? いったい、どうして? 今朝、会ったときは元気そうだった。病気ではないはずだ。だとしたら、事故か、事件。 「おばあちゃん。ちょっと、わたし、笹野さんの家まで行ってくるよ」 「え? どうしたの? 急に」 「うん。ちょっと、杏ちゃんに会いたくて」 「そう? 気をつけてね」 祖母に見送られ、愛莉は外へかけだした。 杏が事故に会ったのなら、すでに家族には連絡がいっているはずだ。 ただし、事件だとしたら、まだ誰も、その死に気づいていないかもしれない。 きっと、杏は自分が死んだことを、愛莉に知らせに来たのだ。 そう考え、子どものころに遊びに行ったことのある、杏の家まで走っていった。 笹野家は外から見た感じ、異変はない。 ごくふつうに明かりもついているし、親戚などが集まっている気配もない。 杏が事故でたったいま息をひきとったのだとしたら、家族は病院に行っているだろう。つまり、少なくとも事故死ではなさそうだ。 愛莉は思いきって、笹野家の呼び鈴をならした。 すぐにインターフォンがつながった。 「はーい。どなたですか?」 杏の妹だろうか? 若い女の声がたずねてきた。     
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