六章

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「わたし、平野愛莉です。今朝、杏ちゃんと会ったので、なつかしくて、話がしたいんですけど」 「ちょっと待ってね」 インターフォンが切れた。しばらくして、玄関ドアがひらき、女が一人、現れた。 門のところまでやってくると、街灯の光で顔が判別できる。愛莉の知らない女。杏には二つ下の妹がいた。あまり記憶に残っていないが、その妹だろうと思った。 「こんばんは」 愛莉が声をかけると、相手も笑顔で応えてくる。 「こんばんは。お話って、何?」 「えっ?」 愛莉はとまどった。 もしかして、やはり、杏は事故で病院に運びこまれたのだろうか。家族は病院へかけつけ、妹が一人で留守番をしているのか? でも、それなら、この笑顔は妙だ。 「ごめんなさい。たいしたことじゃないんだけど、杏さんと話したくて」 「今、夕食中だから、また明日でもいいかな?」 「えっ? 杏さん、おうちにいるの?」 女の表情が不審そうになった。 「わたしが杏ですけど? あなた、どなたですか?」 愛莉は女の顔をまじまじと凝視した。 違う。どう見ても、杏じゃない。 なのに、自分を杏だという、この女は? 「ーー杏? どうしたの? お友達じゃなかったの?」     
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