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七章
翌日。
愛莉は滝川圭介に電話をかけた。
「会って、話したいことがあるんです。わたし、大変なことを知ってしまったかもしれません」
「わかりました。では、九時半に駅前の喫茶店でいいですか?」
店の名前を告げられた。
電話を切ったあと、愛莉は雅人にも電話をかけてみた。昨日から、またずっと連絡がとれていない。
はたして通じるだろうか?
(お願い。出て)
雅人の電話番号、聞いたものの、一度もつながったことがない。これじゃ携帯の意味がないと思いながら、何度かコール音が続くのを聞いた。するとーー
「……黒川です」
雅人の声だ。
「よかった! 雅人くん。昨日も途中でいなくなるから!」
「愛莉……」
「ねえ、今日、会える?」
「うん。会いたいね」
「あっ、でも、わたし、今から滝川さんに会うんだった」
「ああ」
「雅人、滝川さんに連絡した?」
「いや」
やっぱり、雅人は圭介をさけているのか。
「今、どこにいるの?」
「蛍のキレイな場所」
水蓮の咲いていた、あの池。
雅人は、あそこにいるのか。
「圭介さんにも、伝えておいて」
「え? うん」
電話は一方的に切れた。
なんとなく、雅人のようすが変だった。
でも、いちおう電話がつながることはわかった。
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