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あとでまた、かけよう。
そう考え、愛莉は駅前の喫茶店へむかった。
捜査で忙しいのだろう。
愛莉が店に到着したときには、まだ圭介は来ていなかった。約束から十分ほど遅れてやってくる。
「すみません。今朝も明け方まで捜査していたので」
「起こしてしまったんですね。こちらこそ、すいません」
「いえ。どうせ、もう起きる時間でした」
圭介はコーヒーをたのんだあと、すぐに本題を切りだした。
「それで、お話とは、なんですか?」
愛莉も単刀直入に話す。
「滝川さんは以前、蝉じいさんと呼ばれていたそうですね。昨日、祖父から移し身について、すべて聞きました」
圭介はチラリとまわりのテーブルを見たが、平日の中途半端な時間だ。抑えた声が聞こえる範囲に、ほかの客はいない。
圭介はそれでも必要最小限まで声をひそめる。
「そうですか。じゃあ、あなたのおじいさんを殺害したのは、やはり……」
「……ということですね。滝川さんは、わかっていたんですね? 移し身だということに」
「ええ。ですが、殺人事件は県警の管轄になってしまうので、私では、どうすることもできなくて」
「その移し身なんですが、じつは……」
愛莉は昨夜の杏の件を説明した。
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