1 つぼみ

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やり取りが一段落ついたのか、久住君の動きが止まっていることに気がついた。ぴくりとも動かないから不思議に思ってよく見たら、スマホをいじっていたときのままの姿勢で、彼はまた眠りこけていた。 うそ……どんだけ寝るの? ホームルームもう終わっちゃうよ?今度こそ、起こさないと。 そわそわしていたら、久住君はいきなりガバッと飛び起きた。 ちょうど日直の号令がかかって、みんなが席を立ち始めているのを確認すると、彼は現状を把握したのかしないのか、かばんを手に取り慌てて席を立った。 「久住待て!」 担任の怒号のような声も、久住君はひらりとかわしてしまう。 「久住理人!おまえそのまままっすぐ職員室に行け」 「ごめん先生、明日必ず行くから」 「学校なめてんのかコラぁ!」 咆哮みたいな担任の声を無視して走る彼のまえに、今度は隣のクラスの男の子が立ちはだかっている。 「おまえいい加減陸トレだけでも顔出せって」 心なしか広い肩幅で威嚇してるみたいに見える。たぶん水泳部の人だ。 久住君て、運動部所属だったのか。放課後は一目散に下校しているイメージしかなかったからちょっと意外だった。 「そのうち行くって、じゃ!」 体格のいい男子を押し退けてようやく走りだしたのにまた誰かに捕まって、ちっとも前に進めていない。 しかも今度は女子。それは朝も楽しそうに彼とおしゃべりしていた戸田さんだった。 彼女はオシャレで美人で性格の明るさも手伝って、いつもみんなの輪の中心にいるクラスカーストのてっぺんにいる女の子だ。彼氏が切れたことがないって噂に聞いたことがある。 そんな子に先回りされているのに、彼は戸田さんの誘いすら振り切って、階段を駆けおりてしまった。
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