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なにやってるんだろう私。
久住君ばかり目で追って。
ちょっと話しかけてもらったくらいで変に気にして……恥ずかしすぎる。
早く帰ろう。帰る以外に予定はないし、いつだって学校は居心地が悪い。
そそくさと昇降口で靴を履き替えて自転車置き場へと向かった。いつもどおり、夕日が降りていく駅のほうへ、ひたすら自転車を漕ぐ。
それでも前かごのなかのお弁当箱はめったに跳ねたりなんかしない。
特に会いたいわけじゃないし、むしろ顔を会わせるのは気まずい。
それなのにこの時間は去っていったふたりのことを思い浮かべない日はない。
千絵梨もお母さんもどうしているんだろう。元気にしてるのかな。
喉にささった魚の骨みたいに、抜けたあともずっとちくちくとした嫌な痛みが消えないんだ。
そのせいなのか、人のいない場所を探してこっそり食べていたお弁当も、もう最近は食べられなくなってしまった。
そんなんじゃダメなのにと思ったらペダルを踏む足が鉛のように重たくなって、スイッチが入ったみたいに胸が痛くなった。
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