1 つぼみ

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中学のときに両親が離婚して、姉とは名字が変わってずいぶん経つ。 もう高校生になったし、家族はみんなそれぞれの時間を生きている。 咲いた桜はかならず散るし、季節は移ろうもの。 それは特に不自然なことじゃない。 過去を懐かしんだってなんにもならないってちゃんとわかっている。それなのに、胸の辺りをキリキリさせる、この虚しさはなんだろう。 お昼は購買やコンビニでいいやと思っていたのに、高校に上がるとなぜだかお父さんは毎日お弁当を作ってくれるようになった。 ちゃんと感謝しているけれど、本当は「いらない」って何度も言いかけた。 だって、焦げたたまご焼きがいつも入っている色味のないお弁当を学校で開けると、すごくみじめな気持ちになるからなんだ。 それをクラスメートに見られるのが恥ずかしいし、そんなふうに思う自分のことをどんどん嫌いになっていくことにもう疲れてしまった。
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