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ほんとは美味しかったよ、ありがとうって、ちゃんと言えるようになりたい。
そうすることは正しくて美しいことだよってお母さんならきっと褒めてくれる。
だけど、自分は正しくも美しくもないって嫌なくらいもう知っている。
お母さんの教えに責められて、自分はどんどん卑屈になっていく。
うつむいた視線の先でくるりと桜の花びらがひるがえった。
何もかもがキレイな春という季節が、いつからしんどいと感じるようになってしまったんだろう。
ペダルを踏むたびに、自転車は捨てられた子猫の鳴き声みたいな音を立てた。
この気持ちを代弁してくれてるのかな、なんてセンチメンタルになったりしてさ、ほんとバカみたい。
誰でもいいから「オイルが足りてないだけだよ」って、笑い飛ばしてくれたらいいのに。
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