260人が本棚に入れています
本棚に追加
それは駅のすぐ近くに差しかかったときだった。噴水のまえに、人待ち顔の倉持君をみつけた。
その横顔を、遠くからでも見まちがうはずなんかない。
彼は中学のときからずっと目で追っていた、憧れの人だったから。
そのすぐ後ろに続いて改札から髪の長い女の子が出て来て、ふたりは当たり前のようにならんで歩きだした。
惰性で進んでいた自転車に、強くブレーキをかけた。甲高いブレーキ音が、やけに神経を逆なでする。
彼の隣を楽しそうに歩いている女の子は姉だ。あれは間違いなく千絵梨。
最初のコメントを投稿しよう!