1 つぼみ

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それは駅のすぐ近くに差しかかったときだった。噴水のまえに、人待ち顔の倉持(くらもち)君をみつけた。 その横顔を、遠くからでも見まちがうはずなんかない。 彼は中学のときからずっと目で追っていた、憧れの人だったから。 そのすぐ後ろに続いて改札から髪の長い女の子が出て来て、ふたりは当たり前のようにならんで歩きだした。 惰性で進んでいた自転車に、強くブレーキをかけた。甲高いブレーキ音が、やけに神経を逆なでする。 彼の隣を楽しそうに歩いている女の子は姉だ。あれは間違いなく千絵梨。
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