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自転車のスポークが地面を削る摩擦音が響き、おもいきりアスファルトに放り出された。
何回横転したかわからないけれど、気づくと地面に座り込んでいて、そこは路肩からだいぶ離れた歩道側だった。
「大丈夫?動いちゃダメよ!すぐ救急車呼ぶからね!」
「いえあの……だっ、大丈夫です」
年配のおばさんが、深刻そうな顔でわたしの顔を覗きこんでいた。派手に転倒したわりに、ズキズキと痛むのは手のひらくらいなのに。
「ああそうだわ、あっちの子も!」
おばさんの目線の先には、いあわせた通行人でちいさな人だかりができていた。
「まさか……さっきの男の子……」
あわてて振り返ると、トラックは何事もなかったように交差点を左折しようとするところで、それを確認したらホッとして全身の力が抜けてしまった。
「ダメよ、止血しなきゃ!」
「俺なら全然平気ですから」
人だかりが割れて、同じ制服を着た男の子が立ち上がるのが見えた。
ズボンが破れて、右足の脛の辺りからたくさん血が出ている。
彼は足を引きずりながら、まっすぐこっちへ歩いてきた。
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