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「何かお詫び……わたしにできることで、何かないかな」
ひとりごとみたいにゴニョゴニョ言ってしまってからあわてて口をふさいだ。
あまりに唐突すぎる大事件のショックで、心の声がもれちゃうなんて。
「それなら明日の朝、後ろに乗っけてよ。俺あそこにいるから」
後方の改札近くにある待ち合わせスポットの噴水を振り返っていた。
「そうだよね。自転車乗れないと、困るよね」
座り込んだまま自問自答していると、久住君はわたしの手首を今度は強引に引っ張った。
「あ……ありがとう」
「腰抜けてそうだもんね」
図星をつかれて顔が赤くなる。
「交換しよ。何かと必要でしょ今後」
「……うん」
お互いの連絡先を交換すると、わたしは脇目もふらずにお店へと走った。
ほんとうは、こころの弱さをすべて見透かされているような気がして、彼の目を一度も見ることができなかったんだ。
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