1 つぼみ

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どうしよう、彼に大怪我をさせてしまった。その事実が、ジワジワとわたしを責めたてた。 急いでホームに駆け込んでみたものの身の置き場なんてどこにもない。 得体のしれないものが、胸のあたりで蠢いているような気がしてくる。 座りこみそうになるほどの息苦しさも、ぐっとこらえるしかなかった。 電車がもうすぐ入ってくる。 ふと、デート帰りのふたりに遭遇するかもしれないと思ったら、頭のなかが真っ白になった。 やだよ、会いたくない。 倉持君に会いにきた千絵梨になんか。
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