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「……戸田あのさ」
だるそうに、でもはっきりとした口調で久住君がそう言うのが聞こえた。
「わ、久住が起きた!」
「ピアス見せてよ」
戸田さんは大きな目をぱちぱちさせている。
「いきなり? 今日右と左で違うんだけど」
「んーと、そっち」
「外す?」
「いやそんままで」
「……あんまマジマジ見ないでよね、恥ずかしいじゃん」
椅子を引く音がしたからおどおどと顔を上げると、彼女は左隣にいる久住君に右耳のピアスを見せようと反対側に回り込もうと立ち上がってそして……席が、空いた。
ぽかんとしていたんだろうか、久住君がくるりとこっちを振り返り、その口が「ほら」と動いた。「座んなよ」って彼の目がそう言ったのがはっきりわかった。
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