1 つぼみ

32/34
前へ
/256ページ
次へ
さっきの後ろ姿が、胸を痛める。 この目であんなシーンを見てしまって、何事もなかったように振る舞えるほど、わたしは物分かりよくできてない。 胃のあたりから込み上げてくる苦いものを、いつものように無理矢理飲み下した。 その嫌な後味は、いつまでたっても消えやしない。 「間もなく○○方面行き快速電車が通過致します。黄色い線の内側まで下がってお待ち下さい」 アナウンスが流れて、ホームの黄色い線をじっと見た。そのデコボコに、何気なく右足を乗せた。 足裏で自分の体重をちゃんと感じとれることにホッとして、左足もゆっくりラインの上に移動させてみた。
/256ページ

最初のコメントを投稿しよう!

260人が本棚に入れています
本棚に追加