1 つぼみ

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わたしという存在の重さ。 それが黄色の線のうえで気持ちよく足裏を刺激していた。 でも、足からとおく離れた頭のなかでは、そんなものとっぱらってしまえと、ずっと誰かの声がしているんだ。 (とっぱらうって?) (飛ぶんだよ) (飛んでどうするの?) (タッチするんだよ、あっち側に。誰にも気づかれないように。そっと) 小さい頃にした、だるまさんがころんだ、みたいな? (ほら、鬼の見ていないすきに。その黄色い線がスタートラインだ) 言われるがまま、足元を見た。 ほんとだ、大丈夫。足かせなんてない。 だからほら、右足も左足も。 黄色いラインを越えるだけでいい。 (さぁ) また声がした。 頭のなかで静かに強く響くから、悲しくて苦しかった気持ちを忘れて、いつのまにか両足が黄色いラインを越えていることもわからなかった。
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