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「ちょっと!ピアス見ないの?即寝とかありえないんだけど!」
「ぎゃはははは、ウケる~」
二人のやり取りを気にもとめず、久住君は机の上に上体を投げ出して、もうちいさな寝息を立てていた。
さっきの、なんだったんだろう。助けてくれた気がする……とにかくお辞儀くらいはしなきゃいけない気がして、勇気を出してもういちど隣を見た。
本鈴が鳴ってしまった。先生が教室に入ってくる。
久住君、寝てたら怒られちゃうよ!
そう言いたいけれど、言えるわけがない。
起こした方がいいと思う。でもどうやって?
グズグズしている間にも先生が鬼の形相でこっちにやってくる。
「久住!おいコラ!」
彼は魔法にでもかかっているのか、先生の太い声にぴくりとも反応しない。あちこち身体をつねってもまったく起きなかった。
ついに愛想を尽かした先生にクラスのみんなは笑っていたけれど、人間てこんなにも深く眠れるんだと、私はひとり感心してしまっていた。
彼ばかり見てしまっていたのか、こっちを振り返っている戸田さんとばっちり目があってしまった。
というか、睨まれていたかもしれない。
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