1 つぼみ

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「ちょっと!ピアス見ないの?即寝とかありえないんだけど!」 「ぎゃはははは、ウケる~」 二人のやり取りを気にもとめず、久住君は机の上に上体を投げ出して、もうちいさな寝息を立てていた。 さっきの、なんだったんだろう。助けてくれた気がする……とにかくお辞儀くらいはしなきゃいけない気がして、勇気を出してもういちど隣を見た。 本鈴が鳴ってしまった。先生が教室に入ってくる。 久住君、寝てたら怒られちゃうよ! そう言いたいけれど、言えるわけがない。 起こした方がいいと思う。でもどうやって? グズグズしている間にも先生が鬼の形相でこっちにやってくる。 「久住!おいコラ!」 彼は魔法にでもかかっているのか、先生の太い声にぴくりとも反応しない。あちこち身体をつねってもまったく起きなかった。 ついに愛想を尽かした先生にクラスのみんなは笑っていたけれど、人間てこんなにも深く眠れるんだと、私はひとり感心してしまっていた。 彼ばかり見てしまっていたのか、こっちを振り返っている戸田さんとばっちり目があってしまった。 というか、睨まれていたかもしれない。
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